両備&岡電吠える

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(画像はイメージです)

両備グループの中核企業である両備バスと岡電バスが、路線バス網の4割について、一気に廃止届を出したことが話題になっています。

なにごとか・・・と思って報道を眺めてみると、どうやら市内を循環させるバス路線である「めぐりん」を運行するライバル会社(八晃運輸)が、両備バスの基幹路線である西大寺線に相当する区間に、より割安な運賃で参入を希望し、運輸局がそれを認可したことに対する猛烈な反発から・・・という事情のようです。

よく、地方事業者においては、

高速バスや一般の黒字路線の収益によって、どうにかこうにか赤字路線を維持する

・・・という話があります。
四国であれば、四国交通や宇和島自動車あたりの状況を思い浮かべると分かりやすいかと思われます
(だからこそ、四国交通はJRバスグループの松山・高知~大阪線が德島道上のバス停に停車することに激しく反発し(現在は、「一部便のみの停車」ということで落ち着いています)、宇和島自動車もJRバスグループの松山~大阪線が宇和島に路線延長する計画に激しく反発した・・・と。あれ、軋轢を起こしているのはJRバスばかり?)。

それにしても、まがりなりにも大都会--まあ、“政令指定都市”ですし・・・--である岡山市をエリアとする事業者において、こんな激しい反発が起こる・・・ということは、個人的には少々意外なところです。

他方で、(これは岡山市に限りませんが)地方中核都市においても都市交通を担うのは“クルマ(自家用車)”・・・という現実もありまして、その意味では一般路線バスも全くもって“安泰”ではないのかもしれません。




とはいえ、数あるバス路線は、全路線が同じような収益状況であるわけではなく、稼げる路線もあれば赤字路線もあり・・・というのが、どこにおいても現実でしょう。

そして、両備グループにとって「西大寺線」(岡山駅前~西大寺バスセンター)は、数少ない優良路線のひとつだそうでして、私も一度だけ(しかも、途中区間だけという中途半端極まりない乗り方でしたが)利用したことがありますが、確かに本数も比較的多かったです(データイムでもおおむね10分ごと)。

そういう“優良路線”だからこそ、ライバル他社が参入しようとするわけでしょうが、「おいしいとこ取り」だけされたらかなわないというのが、既存事業者の偽りない言い分でしょう。


こうして考えてみると、結局は“複数の対立する利害が絡み合っている”・・・ということになりそうで・・・

西大寺線の利用者:競争で運賃が安くなるなら結構なことではないか。どうして(自分が利用するわけでもない)不採算路線を支えるために、割高な運賃を強いられる必要があるのか

不採算路線の利用者:(自分が利用するわけでもない)路線の競争で、自分が不便になることは御免蒙る

ライバル会社:規制緩和で路線の開設・廃止は柔軟に行えるようになったのだから、採算路線だけに参入して何が悪い


・・・というわけで、

結局は“自分ファースト”



・・・というオチになるのが何だかなぁ・・・なところですが、どこの言い分もそれぞれの“正当性”はあるわけで、誰もが満足する正解はなさそうです。
自治体や地域によっては、ライバルどうしであっても「協議会」(的な何か)を設置して、地域の交通網のバランスを維持することに腐心する事例もありますが、岡山においてはそうもなっていないようで・・・。


そういえば、同じような図式・・・

国鉄→JR(大都市圏の黒字で地方ローカル線を維持)
高速道路網(東名や名神といった、とっくに償還が終わっているはずの路線で通行料を取り続けながら、地方高速道路を建設・維持)



・・・でも見受けられるわけで、昔も今も問題の根幹に大差はない・・・のかも、しれません。


この騒動、ほんとうに路線廃止に突き進むのか、はたまた運輸局なり沿線自治体なりが前面に出て調整するのか、ライバル会社が路線新設を取り下げるのか・・・どうなるのかはわかりませんが、


“公共交通網の維持”に一石を投じた

・・・ことだけは、間違いなさそうです(既存事業者の“自助努力”だけに任せるのはあまりに酷ですね・・・)。




ついでながら、今回の報道を眺めていて初めて気がついたことがありまして、


岡山電気軌道の低運賃
(岡山駅前を起点としたおおむね1km圏内は100円区間、そこからはみ出しても140円均一)

・・・実は、これも今回の一件で登場したライバル会社が運行する岡山市内中心部循環バス「めぐりん」の低運賃に対する対抗手段の一環なのだそうでして、


運賃が安いことすばらしい
ロケーションシステムやMOMOの導入など、サービスはすばらしい


・・・とだけ言っているわけにもいかない“背景”を知ってしまって、そこは複雑なところです。

全国的にも路面電車の運賃は“抑えめ”であることは確かですが、それにしても、区間を限ってとは言え「100円区間がある」というのは--長崎電軌が10年ほど前に100円均一運賃を放棄して値上げした今となっては--全国随一の格安運賃であることも確かです。

「めぐりん」対策ということは、「めぐりん」がなければ少なくとも全線140円(もしくはそれ以上)の運賃設定になっていたわけでして、

競争がサービスを活性化させる


・・・ともいえれば、

どこか他のところにしわ寄せが

・・・ともいえるわけで、難しいところですね。

なお、ライバルの「めぐりん」は、原則として日野ポンチョを主体とした中小型バスに絞って運行しているようで、イニシャルコスト・ランニングコストともに、バス事業者としては極限まで切り詰めているからこその、100円均一運賃に象徴されるような“低運賃”ともいえそうです。
確かに、既存事業者は大型車主体で、いろいろと高コスト体質であろうことも否定できませんからね。

また、岡山市が都市規模の割にバス事業者が多いことも、収益性という意味では裏目に出ているのかも、しれませんね
(他方で、単一事業者でまともな競争原理がはたらかないのも、それはそれで困りものなのですが・・・)。
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JRバスの松山エクスプレス号にまつわる話

JRバスの大阪・神戸~松山線で、多数のバス会社と競合することは知ってましたが、いくつかの会社は表立って反対したこと、特に宇和島バスがJRバスの宇和島延長に強硬に反対したのは初めて知りました。
なお、JRバスは旧国鉄時代からバス事業を営んでましたので、岡山の新規参入事業者(どうやら、昔からあるバス会社ではないようです)とはある意味で事情が違うとも言えますね。

この機会ですので、JRバスvs地方バス会社という観点で分析をしてみました。

■JRバスの強み
やはり、JRという全国手t来な知名度と資金力(特に本州3社系列)でしょう。親会社での比較ですと、連結売上高で私鉄1位の東急電鉄ですら、JR3位のJR西日本に及ばない状態です。一方で、JR四国と伊予鉄ですと、伊予鉄のほうが少し連結売上高が多いようですので、JRだからと言って必ずしも資金力が十分でないとも言えます。

■JRバスの弱点
地方バス会社のほうが、地元に多数の営業所を持っており、有人販売拠点は充実していると思います。また、県内に高速バス以外にJRバスが全くないエリアだと、JR=鉄道屋のイメージでしかなく、バスを走らせていることすら知らない人もいると思います。

■JRバスの参入機会
都市間高速バスのうち儲かる区間であればいろいろとやりたいでしょうね。特に、愛媛なら久万高原行きのようにもともとバス路線があるところであれば、営業所がすでにあるのでそこを拠点に参入はすぐできると思います。全く既存の路線がないところは、営業所を構えるところからスタートですね。

■JRバスの脅威
宇和島バスや四国交通のように、参入自体を反対されるケースもあると思います。自由化されたので、JRバスが参入を強行すれば多分通ると思いますが、駅以外の市内にバス停留所を立てられないなどの合法的な範囲で妨害されて(地元バス会社が土地を持っている場合)結果的に参入ができないケースはあるかと思います。

それにしても、JRバス側(とくにJR四国バス)もすごいですね、自社の本業である鉄道のライバルとなりうる事業に力を入れるわけですからね。鉄道路線が貧弱なところ(島根県西部~山口県の日本海側とか)ならJRバスが活躍するのはよくわかりますが、四国は特急列車網がありますし、そのレベルではないのかと思います。

地方のバス会社がJRバスと競合する状態になった場合、基本的に資金力ではどうしても劣ると思うので、やはり地元の営業所やバス路線網を使った営業力がカギを握ると思います。バス車内にビラを吊るすだけでも違うと思います。世の中はスマホや携帯を使いこなす人たちばかりではないので、そういった人をターゲットにするのが良いのかと考えます。

Re: JRバスの松山エクスプレス号にまつわる話

KTさん、コメントありがとうございます。
今回の一件、地方における公共交通網のあり方について、大いに考えさせられるものでした(バス路線の規制緩和、基本的には高速バスや都市部の一般路線を想定したものでしょうから、地方部の一般路線で「美味しいところのつまみ食い」をされることは、制度設計としてあまり想定していなかったのかも・・・)。

JRバスが松山・高知~大阪線でいろいろと軋轢を起こしたのも今や昔ですが、一時期は大変なことになっていたものです。
確かに、地方事業者にとって自社エリアと都市部を結ぶ路線は「稼ぎ頭」にして「命綱」でしょうから。
もちろん、2000年代以降のバス自由化(いわゆる需給調整規制の廃止)以降、貸切・乗合バスともに参入は自由になったのですから、いかに既存事業者が反対しようとも法理上は参入を止めることはできません。
他方で、公共交通網全体のバランスを考慮するならば、「自由だから何をしてもいい」というわけにもいきません。ジャ※コが進出して地方商店が壊滅し、ついでジ※スコが撤退したら何も残らなかった・・・という話でもありませんが、「結局何も残らない」では、笑い話にもなりません・・・
(その意味では、もう少し時期が早ければ、松山EXP大阪号の三島川之江IC停車も大問題になっていた可能性があります(実は、せとうちバスは反対したものの、表だった動きにならなかっただけかもしれませんが・・・))。

JRバスの強みといえば、(今でもそうですが)JRバスは免許エリアの広さを誇っており--京都・大阪・神戸すべてに発着するという芸当は、民鉄系にはできません--、だからこそ、ライバルとなる民鉄事業者と軋轢を起こすことが、とりわけ「第一次高速バスブーム」(平成初期)においてはいろいろなところで見受けられたものでした(このあたりの事情については、少し古い本ですが、鈴木文彦氏の『高速バス大百科』に詳しいです)。
(ツアーバスを除けば)「JRバス関東が日本最大の高速バス会社」という、冗談のような話もあったものです。

そうかと思うと、四国内相互発着路線のように(路線の規模が小さい場合)、民間事業者とJRバスが共同運行するようなケースもあるわけですから、ライバルだったり共同運行したりと、興味深くもあればよくわからなくなるところでもあります(松山~高知線が共同運行にならないのは、国鉄~JRバスの“プライド”によるものでしょうね)。
ガチガチに競争するのがいいのか、競争を避けて共存を図るのがいいのか、路線や地域の事情によっても変わってきますので、難しいところです。昨今のコスト削減の流れからすると、松山~大阪線程度の距離であれば、競争がなければオール4列化されていてもおかしくないところでして、その意味では、ライバルどうしの競争があってよかった・・・のかもしれません(ドリンクサービスがなくなる程度で済んでいるのですから・・・)。

また、「JRバスの弱点」に関しては、地方においてはご指摘のとおりだと思います。地方では民間既存事業者の方が「営業力と知名度に勝る」というのも、まさにそのとおりです。インターネット予約・発券が普及している現代であれば昔ほどではないにしても、発券箇所という面でも、民間既存事業者の方が優位といえるでしょう。
「知名度」という面では、圧倒的に台数の多い自社バス・電車に自社高速バスの広告を大々的に展開できることも大きい・・・と、伊予鉄バス(の一般路線)に揺られているといつも思います(必ず自社高速バスの広告を掲出しています)。JR四国バスは、一般路線がほとんどありませんので、それと比べるとなおのこと。

また、ご指摘のとおり、本業(鉄道事業)が、どう考えてもじり貧にしかならない--高速道路や航空機との競争もさることながら、過疎化が進行するというのがもう“どうしようもない”--四国において、JRが高速バスに活路を見出すのも、方策としては理解できます。どうせバスに流れるなら、他社ではなくて子会社に流出させる方がまだマシだ・・・と。
他方で、単価的な意味ではバスは鉄道に劣るわけでして、JR四国は公的な支援--もちろん、JR化以来のスキームとして「経営安定基金」はありますが、未曾有の低金利では・・・--をいっそう必要としているのかもしれません。北海道ほどではないにしても・・・。
四国→関西・首都圏の企画乗車券(「阪神往復フリーきっぷ」「こだま往復きっぷ」「のぞみ早特往復きっぷ」など)は充実しているのに、逆方向の企画乗車券が悲しいくらいに存在しないことも、四国側の危機意識のあらわれなのでしょう。

よくよく考えてみると、四国の主要幹線、とくに土讃線--沿線の人口密度が著しく希薄--において、編成を短くしてでも1時間ヘッドの特急網を維持していることは、もはや奇跡にさえ思えてきます(まあ、高知空港で以前胴体着陸騒ぎがあって、航空機からある程度鉄道に回帰したところもあるとしても・・・)。

No title

こんばんわ。

100円運賃に関しては、私の記憶では規制緩和以前からやっていたように思えますが、
西鉄が福岡都心100円バスを始めた後ぐらいでしょうか?検索しても良くわかりません。

その西鉄ですが、基本1社独占ということもあり、特に福岡都市圏では運賃が高めになって
いますが、よく見てみると、首都圏や京阪神で見られる「電車+バス」よりも若干安く
都心直通というやり方を貫いています。(例外は大橋駅で接続する那珂川町方面でしょうか?)
西鉄は高速バス含む路線バス部門が赤字とのことですが、それだけ収益が上げにくい
ビジネスモデルが路線バスというのが分かります。
それ故に本気で考えないといずれ大都市圏に波及してくること必須なのですが、
どうも中国運輸局の対応がイマイチなのが残念です。
頑なに?2両ワンマンを認めない?四国運輸局とは大違いですね。

西鉄

イコやんさん、コメントありがとうございます。

適当な記事を書いておいて反省・・・ですが、岡電が100円区間を創設した時期、確かに私は調べていないというか、裏をとっていませんでした・・・。
ただ、100円区間が「めぐりん」の路線網と重なることは事実です・・・と書いておいて、そうであるならば、清輝橋線は全線100円でないとおかしいのではないか・・・(まさに、「めぐりん」と路線の全体が重なっているので・・・。清輝橋線の電車に乗っていると、よく「めぐりん」のポンチョを見かけます)とも思いましたが、そこまではおつきあいしない・・・というところでしょうか。
なお、「めぐりん」の運行主体である八晃運輸は、もともとタクシー事業者だそうでして、そういえば京都でも似たような騒動がかつて持ち上がったような気が、しないでもありません(いわゆるエムケイのバス事業参入問題)。もっとも、運輸局がブレーキをかけたのか、京都では既存事業者--とくに、京都市交通局--の力が強すぎるからか、エムケイは参入を断念し、事前に購入していたバスは京都市交通局に移籍した(その結果、交通局カラーのポンチョという謎な存在がある)--ということも、あったものです。

さて、福岡にはほとんど行ったことがないので、西鉄バスの事情についても「実感」としてはないことを正直に告白しますが、福岡もまた、西鉄一強状態(独占状態)でしたね。
また、鉄道事業とバス事業を同時に行っているという意味でも、(私の知る範囲では)岡電や伊予鉄と通じるところがあるのかもしれません。このような場合、鉄道線と平行するバス路線は鉄道線の運賃にそろえる一方で、鉄道線がない区間では強きの運賃設定をする・・・ということがありまして、西鉄もそのパターンなのかも、しれません。

路線バス事業は、地方に行けば行くほど状況が厳しい--イニシャルコストもランニングコストも、ノンステップ化や乗客サービスの向上等で増えるのに対して、運賃収入がそれに応じて増えるわけではない--というところはあるようで、結局は「人件費を削る(委託だの嘱託運転士だの)」ことでどうにか事業を保たせているようですが、「適正な利用者負担のあり方(これは、路線ネットワークをいかに維持していくか・・・という問題も含むのでしょう)」についても、今後は考えられる必要があるのかも、しれませんね。
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キモプアの紙

Author:キモプアの紙
キモメン兼デヴ兼クソヲタ兼フニーターで当然の帰結として“プア”・・・。略して“キモプア”。
その中でも(まあ、ほかに“キモプア”を自称する物好きもいないでしょうが・・・)選ばれし“逆”エリートゆえに“紙”(ペーパー的な意味で・・・orz)。

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